きょうのことばセレクション

米大統領令

2017.2.1(水) 掲載
 米大統領が連邦政府や軍に対して出す行政命令やその権限を指し、議会の承認を得なくても即座に法的拘束力を持つ。通商政策や移民政策、規制の改廃など幅広い分野に権限はおよぶ。議会が命令発効を禁じる法律を制定したり、連邦最高裁が違憲判断を下したりすれば効力を失う。財源が必要なメキシコ国境での壁の建設や議会が決める税制改正などを大統領一人の力で実現することは難しい。
 大統領令の根拠について、合衆国憲法には「執行権は米大統領に属する」としか書かれていない。大統領の素早い判断を可能にするため、幅広い特権を与えているとの見方もある。19世紀にはリンカーン大統領が大統領令で南北戦争に踏み切った。米議会が定めたイスラエルのエルサレムへの米大使館移転を求める法律も、歴代政権が「安全保障上の問題」として大統領令で実施を凍結している。
 オバマ前大統領は議会の多数を野党の共和党が握るねじれ状態の中、大統領令に頼り、共和党の反発を招いた。大統領令や大統領覚書、大統領布告などの種類があり、使い方は政権により異なる。
米大統領令