シリアの人道危機
2018年4月15日(日) 日本経済新聞 朝刊
あふれる避難民と犠牲者
2011年、中東の民主化運動「アラブの春」に触発され、シリア全土でデモが拡大。アサド政権がデモを徹底的に弾圧したことで、反体制派が武装闘争に転じ、サウジアラビアやトルコなど外国勢力も介入したことで内戦状態になった。さらにその隙をついて過激派組織「イスラム国」(IS)が勢力を拡大。三つどもえの争いが泥沼化した。
内戦による死者は30万~40万人以上とされ、国連によると、トルコなど周辺国に逃れた難民は約560万人。15年に起きた欧州難民危機の主因にもなった。国内避難民も600万人以上と推定される。ISは米軍が主導する掃討作戦の結果、17年にほぼ壊滅状態になったが、アサド政権と反体制派の戦闘は続いている。
避難民らは廃虚やキャンプなどで危険で不自由な生活を強いられ、激戦地では住民が戦闘に巻き込まれて犠牲になっている。アサド政権側には住民を巻き込む化学兵器攻撃の疑いも度々浮上。17年4月に反体制派の支配地域でサリンを使った空爆が行われると、米軍はアサド政権の犯行と断定して空爆に踏み切った。