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仕事ゴコロ・女ゴコロ

3月 宇宙航空研究開発機構JAXA 小川美奈さん――月周回衛星『かぐや』の成功を経て、次なるビッグプロジェクト進行中!主任開発員[宇宙航空研究開発機構JAXA]小川美奈さん

――面白かった『かぐや』プロジェクト

2007年に打ち上げられた月周回衛星『かぐや』をご存知ですか? アポロ計画以来最大規模の本格的な月探査を行った衛星です。私は当時、筑波宇宙センターに勤務していまして、このプロジェクトにずっと携わってきました。
『かぐや』はこれまでの仕事のなかでは一番面白かったですね。プロジェクト立ち上げ準備も非常に長かったし、作るのにも、打ち上げまでにも時間がかかりました。技術的にもかなりチャレンジで、旧・NASDAとしては、はじめて月まで行った周回衛星でしたし、皆さんもテレビなどでご覧になったかもしれませんが、あんなにキレイなハイビジョン映像が撮れるとは思っていなくて。映像の力はすごいですね。

――映像による実感と興奮!

私たちとしては、月の映像ももちろんなのですが、月の手前に『かぐや』の機体の外に付いているアンテナが写りこんだ映像を見た時に、「あ〜、まさにあの子(機体)がちゃんと月に着いたんだ!」と嬉しくなりました。コンピュータの数字上で確かに月に着いていることがわかっているんですけれどね(笑)。あの映像は私たちも興奮しましたね。

―― 大プロジェクトを円滑に進めるために

『かぐや』プロジェクトをはじめ、現在進行中の『ASTRO-H(アストロエイチ)』プロジェクトで、私が何をやっているかというと、システムズエンジニアリング(SE)です。
宇宙開発という大きなプロジェクトを円滑に進めるために、いつ何をやったらいいか、どんなチームに何をやってもらうべきか、それをやるためにはどんな施設が必要で、何を整えたらいいのか…など、直接ロケットを作るわけではないのですが、どうしたら大きな衛星を宇宙に打ち上げて成果を上げることができるのか、あらゆることを考え、進行していくのが仕事です。

――まるで通訳か翻訳のような仕事

2003年に、宇宙科学研究所(ISAS)と航空宇宙技術研究所(NAL)と宇宙開発事業団(NASDA)がひとつになり、現在の宇宙航空研究開発機構JAXAができてからは、ますますSEの仕事の重要性が増しているように感じます。
この仕事の最大の苦労は、やはり、多くの機関の人間が携わるために起こる、言葉ややり方の違いです。同じ日本語で同じような仕事を進める者どうしなのに、使っている言語やステップの踏み方が微妙に異なり、その整理に時間と労力がかかるんですね。まるで通訳か翻訳をしているような日々です(笑)。結果的には、「みんな同じこと言っていましたね、やるべきステップはちゃんとやっていましたね。よかった、よかった」ということなんですが、しょっちゅうディスカッションしています。

――大切なのは、本当は何を言いたいのか

私が今、新しいプロジェクト『ASTRO-H』でSEを任されているのは、『かぐや』でのSEの経験を買われてのことだと思います。『かぐや』はISASとNASDAの共同ミッションだったので文化の違いがありましたし、『ASTRO-H』はISASの伝統を引き継ぎながらもNASDAの開発手法をも取り入れようとしています。私は、修士2年生の1年間、受託院生として旧・ISASに在籍し、就職先はNASDAだったので、両方の文化を理解できると思っています。できるだけ、目の前の単語や字面に惑わされずに、お互いが本当は何を言いたいのかを見つめるようにし、角が立たないように気をつけます。自分自身としては、異なる2つの文化の違いを吸収できる環境にいられるわけですし、苦労もありますが、学ぶこともたくさんあります。

―― 子育て最大の難関は小学校1年生!

私は息子と娘、2人の子供がいます。夫とは日本宇宙少年団のリーダーどうしの結婚でした。これまでも仕事をやめようと頭に浮かんだことはありませんが、上の子が小学校に上がった時は大変でした。ちょうど『かぐや』の打ち上げ直前だったのですが、入学前後の説明会やらPTA活動というのがすべて平日なんですね。『かぐや』の訓練日を調整したり、母に助けてもらったりと、本当に慌ただしくて、息子自身もなんだか混乱してしまったみたいで、今までできていたことができなくなってしまったり…。“子育ては3日、3週間、3カ月、3年の壁”と聞いたことがあるのですが、それよりも“小学校1年生の壁”です! なんとかやり抜いた時は「乗り切ったぞー!」と思いましたね。

――両方とも諦めないこと

私は仕事と家庭のことを、うまく切り替えできているほうではないと思います。煮込みを作っている横で仕事のことも考えますし。両立のコツは、両方とも諦めないこと、だと思います。子供のことでキーッとなった時なんかは仕事をしたほうがいいですし、逆に仕事で疲れていても子供たちの笑顔に本当に癒やされて気分が変わります。

――2013年度の打ち上げに向けて

現在は、2013年度打ち上げ予定の『ASTRO-H(アストロエイチ)』というX線天文衛星の大プロジェクトが進行中です。日本がこれまで打ち上げてきた天文衛星のなかでも最大規模のものになります。国際協力ミッションなので、海外のスタッフとジョイントSEチームを組んでいます。ブラックホールの謎にも迫る、非常に興味深いプロジェクトです。計画、設計、制作、試験、打ち上げ、観測、研究、解析…と打ち上げの前も後も重要で、トータルで10年、20年かかる事業です。一足飛びで進むものではないので、全体を考えながらも、日々の仕事をこなしていく生活です。けっこう毎日締め切りに追われています(苦笑)。

――宇宙事業も民間企業の時代へ!?

宇宙開発の始まりは、やはり、地球の外でしか観測できない宇宙を見てみたい! 地球を外から見てみたい! 空から観測したら天気予報ができないかな?という学問的好奇心です。宇宙から放送する、通信するといった実用分野はすでに民間企業の役割になってきていますね。私たちの仕事は、技術として使えるかどうかの実証で、「大丈夫ですよ、使えますよ」とわかればもうバトンタッチです。

――使いやすさは宇宙でも人気

見たいものや知りたいことがあるたびに、人間は人工衛星を宇宙に送ってきましたし、今後も打ち上げが進むでしょう。地球の周りの軌道にはじつは使いやすい軌道と使いづらいものがあり、使いやすい軌道には衛星がいっぱい飛んでいます。近年は昔の衛星の残骸などのゴミが増えてきているので、全世界的に「ゴミを出さないようにしよう! ゴミに衝突しないようにしよう!」というルールづくりも始まっています。宇宙をとりまく世界も変わっていますので、ぜひ、注目してください。

――いつか月の裏側の重力を完璧に測りたい!

個人的には、『ASTRO-H』の仕事とは別で、じつは『かぐや』のデータを使って月の裏側の重力を測ってみたい!という好奇心がありまして、月のことを学ぶために総合研究大学院大学へ社会人入学をしました(笑)。宇宙と一言で言っても専門が違うと必要な知識もかなり違うんですね。これまで私はずっとX線天文しか勉強してこなかったので、新しい分野への挑戦です。時間がもっともっと欲しいですね。

取材後記

小川さんのような、異なる組織の橋渡しをする“異文化通訳”はどんな企業や団体にも必要なポジション。目に見えない調整には多大な苦労がありますが、事業を進めるためには欠かせない重要な仕事ですね。「ところで…」と、小川さんの宇宙への興味のはじまりを聞くと、なんと幼い頃に見たアニメ『宇宙戦艦ヤマト』だそう。その後、科学雑誌『Newton』でブラックホールと相対性理論の記事を読み、宇宙の物理を学べる道を選んだとのこと。「宇宙戦艦ヤマトは子供たちにもぜひ見せたい!」とニッコリ。世界に誇る日本の新プロジェクト『ASTRO-H』楽しみです!

JAXAでは、2010年度に金星探査機『あかつき』とともに打ち上げられる予定の小型ソーラー電力セイル実証機『IKAROS(イカロス)』に収録するメッセージを募集中(3月14日まで)です。小川さんの『ASTRO-H』プロジェクトの詳細もJAXAホームページで見られます。
『IKAROS』メッセージキャンペーンへの応募はこちら(http://www.jspec.jaxa.jp/ikaros_cam/j/) 『ASTRO-H』はこちら(http://astro-h.isas.jaxa.jp/
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